毎日思う…。早く仕事が終わらないかなと(笑)。
でも1年で1度だけ「ずっとこの仕事が終わらなければいいのに…。ずっとこの時間が続けばいいのに…」という日が僕にはある。
今年で6回目の開催となる音楽イベント「ライブグリーン」だ。
毎年司会を担当しているが「ずっとこの場所でこの音楽を聴いていたい。
ずっとこの歌声に包まれていたい」と思うのだ。
そう思わせてくれる声の持ち主が「二階堂和美(愛称ニカさん)」だ。大竹市在住のシンガーソングライターで、僧侶でもある。
昨年亡くなられた高畑勲監督のスタジオジブリ映画「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」も手掛けた広島が誇る歌姫だ。
日本を代表するアニメ映画監督が「聞き惚れました。大好きです。はじめて聞いたとき、二階堂さんにお願いしてよかった、と心から思いました」と手紙に綴った名曲を、ニカさんは東京で営まれた「お別れの会」で歌った。
高畑監督と二人で紡いだ言葉が、ピアノの音色とともにジブリの森の青空ににじみ、どこまでも深く響き渡ったことだろう…。
アーティストが歌を作る時には、歌詞が先にできて後からメロディをつける「詞先」と、曲が先にできて後から言葉をつける「曲先」がある。
しかしニカさんは基本的に「言葉とメロディを出すのが同時だ」という。
「その言葉が持っているメロディ…。本来その言葉にはそのメロディしかないというフレーズを探る」そうだ。本当に歌詞がすっと心地よく耳にしみ込んでゆく。
どの歌もそうだ。初めて聴く歌でもそうだ。言葉が持つメロディに自然に寄り添うようなニカさんの音楽に一度でいいから生で触れてほしい。
「ライブグリーン」はRCCラジオがニカさんと一緒に作る音楽イベントで、作り手のこだわった品物が並ぶマルシェや、ものづくりの体験ができるワークショップも楽しめる。
今年は今月30日(日)、広島市中区の本願寺広島別院で開催(申し訳ありません!チケットはこの原稿がアップされる頃には完売しているかも…。HPかRCC事業部でご確認下さい)。
6月最終日の風や日差しを身体で感じながら、心に言葉が、音楽が、充ち渡っていく喜びを味わってほしい。
二階堂和美の歌声には絶対に後悔させない圧倒的な力があるから…。
そしてもう一組が「ハナレグミwith U-zhaan」だ。ハナレグミという名義で活動する永積タカシさん。
CMソング「ウイスキーが、お好きでしょ」でもおなじみ、その深く温かい声と抜群の歌唱力は素面でも酔わせてくれる。
ハナレグミの盟友「ユザーン」が華麗に操るインドの打楽器「タブラ」の音色もお寺の境内に気持ちよく鳴り響くことだろう。
もちろん男女の違いはあるし歌い手としてのタイプも違うが、ニカさんもハナレグミも、耳に入ってくると同時に、心に入ってくる奇跡の歌声だ。
そしてどんなに楽器の音が小さくても、たとえ無音の状態でも、この声が存在するだけで心地よい音楽空間が生まれる。
その声に包まれたバリアの中で、音楽の力、歌声の力を実感させてくれるライブアーティスト、シンプルに「ずっと聴いていたい!終わらないでほしい!」という歌声なのだ。
そんな2人の声が「ライブグリーン」で広島の空に響き渡る。それぞれのライブはもちろんイベントならではのコラボレーションも期待できそう。
共演についての打合せとリハーサルを終えた二階堂さんは「リハでこんなに楽しくて、本番はどこまで行くのかな我々」と語っていた。
2人の共演は全国で初めて、ここ広島で実現する。音楽ファンにとって伝説の1日になるはずだ。
「ずっとこの音楽が鳴り続けばいいのに…」と間違いなく思うから、そう考えると始まる前から少し寂しくなるぐらい楽しみにしている。