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学生時代、ある時 母親にこんなことを言われました。

「これからは、高くても長く使えるものを選びなさいね。」

長い間使えるもの。
その一つが革製品と気が付いてから
できるだけ身の回りのものを革で揃えています。



革は実に面白い。

使い方、手入れの仕方、使用頻度でどんどんその表情を変えていきます。
使うたびに手になじむ。

例えばこのお財布。


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買った当初。新品ピカピカ!

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しばらく使い込んだ後


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そして現在。


ここまで変わるのです。
これは汚れたわけではなく、革の性質もありますが、
オイルやクリームを塗ると徐々に光沢がでて、色が濃くなります。

靴も磨くとピカピカに。


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奇麗になると心地いい。


革製品はどこか大人な感じがします。

父親が長年愛用している手帳ケースも革。
傷も汚れもたくさんありますが、艶があり、まるで戦友のよう。
小さい頃からの憧れだったのかもしれません。


ただ、私も革製品とは小学生時代から長い付き合いがあります。

野球用のグローブです。

硬式野球をされた方はご存知だと思いますが、
野球の硬式グローブの新品は驚くほど硬いです。

触れたことのない方は、スポーツショップに行った際
ぜひ手に取ってみてください。おそらく閉じることはできません。
それくらい硬いのです。
現在は湯もみ加工ですぐに使うことも可能ですが、
私は基本的には一から自分で柔らかくしていくのが好きです。

オイルを塗り、専用のハンマーでポケットを叩き、ボールを当ててみる。
これを繰り返していくと徐々に柔らかくなっていきます。

少しキャッチボールをしてみる。
うまく捕れませんが、芯で捕ると乾いた 良い音が鳴り響く。
少し仲良くなれた気がする感覚。懐かしい。

帰ったら再びオイルを塗る。
黙々と磨いている間、様々なことを考えます。

「今日のプレーは良かったな。」
「あのボール、一歩目が早ければ捕れていたかも」
「どうしたらうまく連携できるかな」
「明日はこうしてみよう」
「明日も頑張ろう」
「…。」

そしてだんだんと磨くことに集中して、やがて 無心に。

この感覚は
私の中ではどこか瞑想に近い感じがします。

気がつけば あっという間に時間が過ぎている。

終わると肩は凝るし、背中は痛い。
何より面倒くさい。

だけど頭の中はすっきりしている。

そしてしっとりとピカピカになったグローブを眺めていると
早くボールを捕りたくなる。

好きな時間です。


でも時々練習で疲れ果てて、すぐに寝てしまうときがあります。

手入れをせずに。

それが続いてしまうこともあります。

そんな時は大概いいプレーはできません。
エラーをした後、バツが悪くてなんとなくグローブを見てしまう。
よく見ると捕球面は乾燥して、掠れた部分は毛羽立っている。

不思議です。

そのせいではないはずでしょうが、そんな気がしてします。

社会人になるときに父親から送られた言葉があります。

『感謝の後始末』
父曰く
「終わりよければすべてよし。失敗する時は最後が多い。最後まできちんと終える。片付ける。仕舞う。終う。そこには感謝の気持ちを添えて。野球と一緒だ。最後に球場にまで礼をするだろう。物も人も、これを生かす人に集まる。」

果たして今の自分は出来ているだろうか。

昔と一緒だ。
靴を磨きながら
自分と向き合っていた。

家族思いで趣味

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