まさか、あれが最後の取材になるとは思わなかった。
5月30日、スポンサーなどへの報告会の席上、広島ドラゴンフライズの佐古賢一ヘッドコーチが退団を表明した。
B1昇格を果たせなかったことに対する「責任」を取ったものだった。突然の表明に我々も驚きを隠せなかった。
報告会終了後、佐古ヘッドコーチは取材に応じた。これが、私が佐古さんへ向けた最後のマイクであった。
15年以上前から、RCCも主催するイベント「3ON3ビックトーナメント」に佐古さんは定期的に出演して下さっていた。
バスケットボールの普及のためには、パフォーマンスもサインも取材対応も惜しまなかった。打ち上げや懇親会でも話題はバスケットボールに終始した。
そんな彼が2013年、広島ドラゴンフライズの初代ヘッドコーチに就任した。夢のような話だった。
ミスターバスケットボールと称される大物は、とにかく我々に歩み寄ってくれた。戦術もわかりやすく説明してくれた。
チームの認知度向上のため、番組にも頻繁にやってきてくれた。
マスコミにもフレンドリーで、お酒を飲まない佐古さんと、居酒屋でケーキバイキングの話をしたのも思い出である。
いつかは広島を去る人物だとは思っていたが、今だとは予想すらしなかった。それだけに、喪失感は大きい。
また、5月には全日本でキャプテンも務めたJTサンダーズの越川優選手もチーム退団した。こちらも、マスコミ対応の鏡だった。
いかなる状況でもわかりやすい言葉で、バレーボールを語ってくれた。
かつて、JTサンダーズのマスコミ対応研修で私が講師を務めさせてもらったとき、実は、越川選手不在をいいことに、彼のインタビューVTRを模範例として教材に用いたこともある。それほど手本になるプレーヤーだった。
佐古さんの最後のインタビューが胸に残る。「広島はスポーツに対する嗅覚が素晴らしい。カープの盛り上がりも、今回のドラゴンフライズへの声援も熱いものを感じました」。
あたりまえのように広島にいた二人のヒーローが広島を離れた。この「ありがたさ」や「凄さ」を伝えきれていたか、自問自答の初夏である。